ブラジリアン柔術のルール完全解説
BJJ大会のルールを初心者にもわかりやすく徹底解説。IBJJFルールを中心に、帯別の許可・禁止技、スコアリング、体重階級、ADCCルールとの違い、大会当日の準備まで網羅します。
勝敗の決し方
BJJの試合では、以下の順序で勝敗が決定します。最も決定的な勝ち方はサブミッション(一本)です。
1. サブミッション(一本)
関節技や絞め技で相手をタップ(降参)させる。最も決定的な勝ち方で、即座に試合終了。IBJJFでもADCCでも共通の最優先勝利条件です。
2. ポイント判定
試合時間内にサブミッションが決まらなかった場合、獲得ポイントの多い選手が勝利。ポイントは支配的なポジションへの移行やコントロールによって獲得します。
3. アドバンテージ判定
ポイントが同点の場合、アドバンテージ(技が「ほぼ」成功した場合に付与される補助得点)の数で勝敗を決定。パスガードの未遂、スイープの途中で戻された場合などに付与されます。
4. ペナルティの差
アドバンテージも同点の場合、ペナルティの少ない方が勝利。ペナルティは消極的な行為やルール違反に対して与えられます。
5. レフェリー判定
すべてが同点の場合、レフェリーの判定で勝敗を決定。より積極的に試合を進めた選手が有利になります。
IBJJFポイントシステム
IBJJFルールでは、ポジションの支配や移行に応じてポイントが与えられます。ポイントを獲得するには、そのポジションを3秒以上維持する必要があります。
マウント / バックマウント(バックコントロール)
相手の上に馬乗りになるマウント、または背後から両足のフック(もしくはボディトライアングル)で相手をコントロールするバックマウント。最も高いポイントが付与される支配的ポジションです。
パスガード
相手のガード(足の防御)を越えて、サイドコントロール・ノースサウス・ニーオンベリーなどの支配的なポジションを3秒以上維持。ガードを越えることはBJJで最も重要なスキルの一つです。
テイクダウン / スイープ / ニーオンベリー
テイクダウン: 立ちから相手を倒してトップポジションを確立。スイープ: ガード(下)からトップポジションを奪取。ニーオンベリー: 膝を相手の腹部に乗せて制圧。それぞれ2ポイントです。
ポイント計算の重要ルール
- 同じアクションで連続ポイントは取れない(例: マウント → 外される → 再マウントは4点のみ。間に別のポジションが必要)
- ガードから直接サブミッションに行く場合、ポイントは発生しない
- 引き込み(ガードプル)自体にはポイントは付かない
- 相手が反則で減点された場合、それはペナルティとして記録される
試合時間(IBJJF)
| 帯 | アダルト | マスター1-2 | マスター3+ |
|---|---|---|---|
| 白帯 | 5分 | 5分 | 5分 |
| 青帯 | 6分 | 5分 | 5分 |
| 紫帯 | 7分 | 6分 | 5分 |
| 茶帯 | 8分 | 6分 | 5分 |
| 黒帯 | 10分 | 6分 | 5分 |
マスターカテゴリーは年齢別: Master 1 (30歳〜), Master 2 (36歳〜), Master 3 (41歳〜), Master 4 (46歳〜), Master 5 (51歳〜), Master 6 (56歳〜).
帯別の許可・禁止技(IBJJFギ)
安全のため、帯のレベルによって使用できるテクニックが異なります。上位の帯ほど、より危険度の高い技が許可されます。
白帯で禁止される技
- ヒールフック(内・外とも)
- 膝十字(ニーバー)
- トーホールド
- カーフスライサー
- バイセップスライサー
- スラム(持ち上げて叩きつけ)
- 脊椎ロック(ツイスター等)
- シザーテイクダウン
- クローズドガードからのスタンド攻撃
- 首への直接的な脊椎ロック
白帯で許可: ストレートフットロック(アキレスロック)、腕十字、三角絞め、キムラ、アメリカーナ、各種チョーク
青帯・紫帯で解禁される技
- 膝十字(ストレートニーバー): 青帯から許可
- 足がらみ(トーホールド): 青帯のノーギから許可(ギでは茶帯から)
引き続き禁止: ヒールフック、カーフスライサー、バイセップスライサー、脊椎ロック
茶帯・黒帯で解禁される技
- カーフスライサー: 茶帯から許可
- バイセップスライサー: 茶帯から許可
- ヒールフック: 茶帯のノーギのみ許可(2024年ルール改定)
- トーホールド(ギ): 茶帯から許可
全帯で常に禁止: スラム、首への脊椎ロック(ネッククランク)、シザーテイクダウン
ペナルティと反則
軽度のペナルティ(警告→ペナルティ)
- 消極的な姿勢(ステーリング): 攻撃を仕掛けず時間を稼ぐ行為
- 試合エリア外への逃避
- 帯を故意に解く(時間稼ぎ目的)
- 道衣を掴んだまま引き込み(特定の条件下)
- 相手の道衣の中に手を入れる
重大な反則(即失格の可能性)
- 禁止技の使用(帯レベルに応じた禁止技)
- スラム(相手を持ち上げてマットに叩きつけ)
- 故意に相手を傷つける行為
- スポーツマンシップに反する言動
- 審判への暴言・暴力
- ドーピング違反
体重階級(IBJJF)
男子の体重階級(ギ: 道衣込み)
| 階級名 | 体重上限 |
|---|---|
| ルースター | 57.5kg |
| ライトフェザー | 64.0kg |
| フェザー | 70.0kg |
| ライト | 76.0kg |
| ミドル | 82.3kg |
| ミディアムヘビー | 88.3kg |
| ヘビー | 94.3kg |
| スーパーヘビー | 100.5kg |
| ウルトラヘビー | 100.5kg超 |
| オープンクラス | 無差別 |
女子の体重階級(ギ: 道衣込み)
ルースター(-48.5kg) / ライトフェザー(-53.5kg) / フェザー(-58.5kg) / ライト(-64.0kg) / ミドル(-69.0kg) / ミディアムヘビー(-74.0kg) / ヘビー(74.0kg超) / オープンクラス(無差別)
ノーギの場合は道衣分の重量(約2kg)を差し引いた体重階級が適用されます。
レフェリーシグナル
試合中のレフェリーのジェスチャーを理解しておくと、観戦も出場もより楽しめます。
腕を上に伸ばす: ポイント付与(指の本数でポイント数を示す)
手を横に振る: アドバンテージ
「パレ」(止め): 試合を一時中断
「ルッチ」(闘え): 試合再開・積極性の促し
指で指す: ペナルティの付与
腕を交差: 失格(DQ)
よくある失格(DQ)の原因
1. 禁止技の使用: 自分の帯レベルで禁止されている技を使用(特にヒールフック、スラム)
2. 道衣の規定違反: 道衣のサイズ、色、パッチの位置が規定に合わない場合
3. 計量オーバー: 登録した体重階級の上限を超過
4. スポーツマンシップ違反: 試合前後の不適切な態度・行動
ADCCルールとの比較
ADCC(Abu Dhabi Combat Club)は2年に1度開催されるノーギ柔術の最高峰大会。IBJJFとは大きく異なるルールを採用しています。
| 項目 | IBJJF | ADCC |
|---|---|---|
| 服装 | ギ(道衣)/ ノーギ | ノーギのみ |
| ヒールフック | 茶帯以上のノーギのみ | 全レベルで許可 |
| ポイント制 | 試合全体でポイント制 | 前半ポイントなし、後半のみ |
| ガードプル | ペナルティなし | 後半にマイナスポイント |
| オーバータイム | レフェリー判定 | ポジションからのエスケープ方式 |
| 試合時間 | 5〜10分(帯別) | 予選10分、決勝20分 |
ADCC独自: 前半ポイントなしルール
試合の前半はポイントが発生せず、サブミッションのみで勝敗が決まります。これにより、前半はサブミッションを積極的に狙い、後半はポイントゲームに移行するという独特の戦略が生まれます。
ADCC独自: オーバータイム方式
同点の場合、選手が交互に有利なポジション(バックマウントやマウント等)からスタートし、規定時間内にエスケープできるかを競います。エスケープできなかった方がポイントを失います。
大会当日の準備ガイド
初めての大会出場でも安心できるよう、当日の流れと準備をまとめました。
前日まで
- 道衣のサイズがIBJJF規定に合っているか確認(袖丈、裾丈、ラペルの厚さ)
- 体重の確認(道衣込みの体重計測を自宅で行う)
- 爪を短く切る(チェックされることがあります)
- 持ち物の準備: 道衣(予備含む2着が理想)、帯、マウスピース、テーピング、サンダル、水・軽食
- 十分な睡眠を取る
当日の流れ
- 会場到着(試合の1〜2時間前): 受付・計量(大会による)
- 道衣チェック: レフェリーが道衣の規定適合を確認
- ウォームアップ: 会場内のウォームアップエリアで軽く体を動かす
- 試合: 自分のカテゴリーが呼ばれたらマット際で待機
- 試合後: 勝敗に関わらず相手と握手。次の試合がある場合は体を冷やさないよう注意
初心者へのアドバイス
- 結果にこだわりすぎない。初めての大会は「経験する」ことが最大の目的
- 作戦は1〜2つに絞る。複雑な戦略は緊張で忘れます
- インストラクターや道場の仲間と一緒に参加すると心強い
- 負けても落ち込まない。大会で負けた経験は、練習100回分の学びになります